なぜ220V単相ブレーカーには接地線なしでライブ線とニュートラル線だけが使われることがあるのか?

家庭用電気設備や小規模な配線を確認すると、220V単相ブレーカーにライブ線(L)とニュートラル線(N)だけが接続され、接地線(PE)が存在しないケースをよく見かけます。電気は安全と直結するため、このような構成がなぜ可能なのかを正しく理解することはとても重要です。この記事では、220V単相ブレーカーにおいて接地線が省略される理由と、その背景となる技術的な根拠について詳しく説明します。

 

 

ライブ線とニュートラル線だけで回路が成立する仕組み

電気回路が正常に動作するためには、電位差が必要です。220V単相システムでは、ライブ線が電力を供給し、ニュートラル線がその電流を戻す役割を果たします。この2本の線があれば、電気の流れは成立します。

ここで重要なのは、接地線(PE)は電流が流れるメイン回路ではないという点です。接地線は安全のための補助線であり、絶縁破壊や漏電が発生した場合に電流を安全に大地へ逃がす役割を持っています。

220V単相交流電源システムの配線図。ブレーカー、ライブ線、ニュートラル線、負荷の接続構成を示し、接地線なしの配線構造をわかりやすく説明しています。


接地線が使われない主なケース

以下のような場合には、ライブ線とニュートラル線だけで接地線が使われないことがあります。

  • プラスチック製外装を持つ小型電気機器: 二重絶縁構造が施されており、接地が不要です。
  • 絶縁トランス(アイソレーショントランス)を使用する回路: 一次側と二次側が電気的に絶縁されており、接地の必要がありません。
  • 仮設電源や移動式電源: 工事現場の仮設照明、キャンプ用電源など。
  • 古い建物の配線: 当初の設計時に接地線が存在しない場合があります。

 

 

接地が不要とされる法律・技術基準

韓国の電気設備技術基準や国際規格(IECなど)によると、金属外装を持たない機器や二重絶縁構造を採用している機器では、接地線が省略可能です。二重絶縁とは、電気部品が二重以上の絶縁によって保護されており、万が一一層が破損してももう一層が漏電を防ぐ仕組みです。

また、絶縁トランスを利用する場合は一次側と二次側が電気的に絶縁されており、接地を必要としない設計となっています。このような条件下では、接地線を省略することが認められています。

接地線がない場合のリスクと注意点

特定の条件を満たしている場合は接地線を省略できますが、条件を満たさない場合に接地線がないと、以下のリスクが生じます。

  • 金属外装の電気機器: 接地がないと漏電時に筐体が帯電し、感電事故の危険性があります。
  • 配線の損傷: ニュートラル線が断線したり絶縁が破壊された場合、重大な事故が起こる可能性があります。
  • 老朽化した設備: 古い設備で接地が行われていない場合は、早急な改善が必要です。

 

 

接地が必要なケースとその理由

以下のケースでは、接地が必須となります。

  • 金属外装を持つ家電製品: 冷蔵庫、洗濯機、電気温水器など。
  • 大型電気設備: 分電盤、産業用機械など。
  • 接地端子付きコンセントを使用する場合: PE線を正しく接続する必要があります。

これらの場合、接地がなければ漏電時に感電や火災につながるリスクが高まります。接地は漏電時に電流を大地へ流し、漏電遮断器(RCD)を作動させて電源を遮断する役割を担います。

 

 

まとめ

220V単相ブレーカーにおいて接地線が省略されるのは、二重絶縁構造や絶縁トランスを使用した場合、またはプラスチック外装の機器など、限定的な条件に限ります。一方で、金属外装の電気機器や接地端子付きのコンセントを使用する場合には、接地線は必ず必要です。

電気配線や設備点検の際には、それぞれの線の役割と接地の必要性を正しく理解し、安全基準に従った設計・施工を行うことが大切です。常に安全を最優先し、正しい知識をもって作業に臨みましょう。

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